プレゼン「スノーボード競技における、対戦相手のAI化の可能性」ご意見、ご質問に対する回答

2016年3/26(土)「第八回ニコニコ学会データ研究会 ~人工知能と根性で挑むコンテンツの世界~」で発表してきました「スノーボード競技における、対戦相手のAI化の可能性」の内容をレポートします。

 

3/26( Saturday) 2016, “The world of contents to challenge for the eighth Nico Nico society data meeting for the study – AI and nature”. It is my announcement “AI possibility of becoming it of the opponent in the snowboarding competition”, I report these contents.

 

「第八回ニコニコ学会データ研究会 ~人工知能と根性で挑むコンテンツの世界~」
http://niconicodatasig8.peatix.com
(累計来場者数:68,960人)

 

“日曜数学会”のメンバーとして発表。

 

【私の発表タイトル】「スノーボード競技における、対戦相手のAI化の可能性」

 

【発表内容】

今回は冬期オリンピック公式種目である「スノーボード、パラレル大回転(パラレルジャイアントスラローム)」に着目した発表でした。

パラレル大回転は、2人同時スタートで旗門コースをどちらが先にゴールを切るかを競うとてもエキサイティングな競技、自動車レースのゼロヨンに雰囲気が近いのかもしれません。観客も盛り上がります。

そこで対戦相手をAI化して、競技シミュレータとして開発することによって、PCやスマートフォンの動く環境下であれば擬似的に競技が出来るのではないかと考え、スポーツにおけるAIの可能性も見いだせるのではないかと思います。

そこには、数学、力学、気象学、心理学、などがそこに盛り込まれます。また人工知能により、パラレル競技の対戦相手、個性、地形攻略、駆け引き、真後ろで急斜面→緩斜面が有利、安全策とリスク高な滑り、個性をランダムで設定、そして地形と、掘れと、バーンコンディション、天候に加えて、対戦相手との駆け引き、スタートの難しさ、低速の難しさ、などなど。

尚、データ取りには根性が必要、データ取りも命がけであり、トライ&エラーの繰り返しです(エラーは骨折なども含む)。

 

 

 

 

 

数学の世界や人工知能(コンピュータ)の世界においても、滑走スポーツに関心を得られることができると感じました。

 

 

私の作成したシミュレータ(の素)の動画

 
https://www.youtube.com/watch?v=jzshVRZ156s

 

 

まず最初に、発表時に聴講者の方々からいただいたご意見やご質問への回答を記述します。

 

【意見1】対戦AIをプレーヤーにどう見せましょう?HMD(ヘッドマウントディスプレイ)で見るには視界を遮るのではないかと思います?

【回答】
競技中、対戦相手を凝視することはまずありません、前方に対戦者がいる場合、視界の中に入りますが、ピントを対戦者に合わせると一番大切な自分の滑りに悪影響を及ぼします。そして後方に対戦相手がいる場合、後ろを振り返ることはほとんどありません
音や雰囲気(空気感?)などで感じ、それで後方にいる相手の位置と速度がだいたいわかります。

戦術的に一例を挙げれば、急斜面から緩斜面にあたる地形で、自分の背後で対戦者が同じスピードで滑ってきたとしたら、抜き返される可能性が高いです。急斜面で前方の選手のスピードにタイミングを合わせて少しスピードを上げれば、その後の緩斜面で抜き返すことができます。トップ選手ほどミスは少なし実力差が均衡しているので、このパターンで勝率に影響が出てきます。例えばソチオリンピック、スノーボードPGS女子の決勝の2本目がこのシチュエーションに当たります。

音などで対戦相手の位置や速度を把握しているのでサラウンドヘッドフォンの活用が効果的かと考えられます。例えばプレイステーションの車のレーシングゲームであるグランツーリスモは5.1chサウンド対応なので、真横の車の位置が画面に見えなくても把握できます。

 

【意見2】スノーボードのデータ解析は一般的に使用できるようになりますか?

【回答】
“一般的”を他分野への応用と捉えて回答します。

まずスノーボードを摩擦係数の少ない移動するスポーツや乗り物として考えると、ほとんどのスピードスポーツ、車や自転車などにも応用が効くと考えられます。車のレースにおいても地形の起伏は重要な要素の内のひとつです。コーナーが上り坂なのか下り坂なのかによってライン取りが変わってくるので、スノーボードのデータ解析が役に立つのかもしれません(逆にカーレースのデータ解析がスノーボード競技の役に立つかも)

スポーツや競技以外への応用では、極論ですが都市開発計画に使えるかもしれません。日本の場合は島国なので特に地形の高低差が激しく、その中で街作りをするケースが多いでしょうが、道路のレイアウトをもっとも地形や重力に効果的な、事故が少なく、低燃費な道路のライン取りを、スノーボードのデータ解析から導きだせるかもしれません。ただこちらもスノーボードの方が後発であるのかもしれません。

 

【意見3】新しい練習メソッドが開発できそう!

【回答】
リアルなシミュレータが開発できれば、実際の雪上競技トレーニングの前にコンピュータ上でシミュレートすることができます。

実際の雪上競技トレーニングの場合、リフトで山頂まで上がる時間や、他の選手との順番待ちなどがあり、1日当たりの滑走本数に限界があります。ゲレンデやスクールの環境にもよりますが、だいたい2時間で4〜6本(ジャイアントスラローム)滑れるといった感じです。

それに対してコンピュータによるシミュレータの場合、1本60秒のレースコースであれば、単純計算で2時間のテスト時間で120本滑走できることになります。また24時間延々テストすることも可能ですので1日1440本滑走できます。

事前にコンピュータでシミュレートして最適な滑走を導きだしてから雪上でそれを実戦する、といった練習方法も考えられるかもしれません。スノーボードの競技トレーニングはPDCAサイクルで行うケースが多いです。Plan(計画)を立てて、Do(試してみて)、Check(試した結果を検証して)、Action(検証結果を元に実践していく)。このPDCAサイクルの高速化がトレーニングの効率化を図れるかと思います。

他分野、特にコストの掛かる分野や危険の伴う分野では、コンピュータでシミュレートさせてから現実世界でテストするのが主流です。

 

【意見4】スノーボードをシミュレートできるとうまくなりますか?

【回答】
特にこれからスノーボードを始める方にやっていただけると効果的かと思います。ゲレンデでの事故やけが人を減らせられます。

理にかなったスキルをあらかじめ覚えることになりますので、始めてのゲレンデでも上達が早いかと思います。

上達とは話が変わりますが、ゲレンデでのルールやマナーもシミュレートするのも必要かもしれません。
などゲレンデでタバコのポイ捨てでの山火事や環境破壊の影響など、ゲレンデ上でバーベキューとかゲレンデ関係者が激怒しているケースも聞かされています

 

【意見5】こんなAIもあり得るのかと新しい知見を頂きました

【回答】
対戦相手の存在するスポーツや競技すべてにおいてAI化は可能かと思います。

現在の車などのレースゲームやシミュレータでは、コンピュータ側は最適なライン取りを描こうとします。

しかし実際の競技では、例えば今回のテーマのスノーボードパラレル競技の場合、最後の決勝戦や3位決定戦までに何本もの本気の戦いを繰り広げられてメンタルが疲弊して集中力がとても低下しています。ノックダウン方式(トーナメント形式)なので、勝ち進むにつれて選手の数が減り、待ち時間が無くなります。最後の一本、スタート台に立った時、「えっ、こんな早いタイミングでスタートするの? ちょっと待ってほしい!」と私は感じます。

この精神状態を是非AI で表現してみたいです。心理描写は人それぞれ、面白そうだと思います。

 

【意見6】他の曲線との比較とかあったら紹介してください

【回答】
最も速い曲線は、真下へ向かった”直線”です。競技において、ライン取りで考える要素のうちのひとつとしていかに直線に近いライン取りをするか、というものがあります。

他にもいろんな曲線が雪上には存在します。

1)ストレートラインとラウンドライン
ストレートラインは直線に近い形状のライン、ラウンドラインは円弧に近い丸いライン。真っ平な雪面ではストレートラインのほうが速いのですが、他の選手の滑走により雪面の掘れが深くなり、ボブスレーコースのようになると掘れに沿うようなラウンドラインの方が速い、というかストレートラインだと掘れのバンクから射出されてしまいます。

2)サイクロイド曲線、最速落下曲線、ハーフパイプの断面図の曲線、
滑走ラインの前半が急斜面で後半が緩斜面のほうが、均等に中斜面よりも速く滑走できます。最高速に達するタイミングが速く、その後最高速を持続する形。地形が複雑で片斜面などがある場合、この影響を特に受けますが、多くの選手達は無意識のうちに最速落下曲線を選択してライン取りしています。

 

【意見7】スノーボードのデータ、色んなデータの取り方があるなと思いました、がんばってください。

【回答】
スノースポーツにおいて逆に他分野からのデータの収集方法を教わり、活用する必要があると思います。ビッグデータは潜在的に存在しますが、全く活用していない状態です。
滑走面に塗るワックス、なぜ効果的に滑るのか科学的に判明しきれてなくで、膨大な滑走データの中と経験と勘などからワックスの成分が各社ごとに配合されているそうです。新品の板よりも1シーズン経過した板のほうが、滑走面が滑ると言われていますが、正確にはまだ謎らしいです。

 

【意見8】けが(特に腕)にはお気をつけて下さい

【回答】
すでに両腕ともケガし続けています。

シミュレータを開発することでケガの発生率を軽減できます。特に、初心者、初級者、中級者あたりの、スノーボードや雪の特性に不慣れな方々にノーリスクで教育などができ、また危険な行為を行うことでどういった事故を引き起こすのか、といったシミュレーションを行うことも可能でしょう。

 

【意見9】けがに気をつけてデータ取りして下さい

【回答】
理想はシミュレータ上でデータ取りできること、雪山までの移動コストも掛からず、道具の劣化も掛からず、ケガのリスクも負わず、障害保険を掛けずにデータ取りができます。

ちなみにスノーボード競技は保険に入っていないと大会エントリーすらできません。ケガすることが前提な競技ともいえます。

 

 

こちらは発表時に使用した資料です。

 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 

発表会場、銀座松竹スクエア

 
 

シミュレータ開発が進めば、またどこかで発表したいと思います。

 
 


   

   

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です